2016年3月21日月曜日

イヤホンの遮音性

イヤホンの評価に遮音性(そして、音漏れ)の項目があるが、ユーザーは大量の機種での比較をするわけでもなく、主観で書かれていることが多く、どこまで参考になるかわからない。それらを決めるのは、ちゃんと密閉できるかであり、それを実現するもっとも重要な要素はどこまで耳奥に入れられるかである。それが客観的に分かるデータが実は存在する。例えば、コンプライの互換性データシートがそれである。コンプライのイヤーピースは100シリーズから500シリーズに向けてイヤーピースの内径が大きくなる。イヤーピースの内径はイヤホンの外径であり、イヤーピース内径の小さい方、つまりイヤホンの外径が小さい方が耳奥に入る構造になっていて概して遮音性が増す。

コンプライのイヤーピースとイヤホンの遮音性の相関が実際どうなっているかデータシートで確かめてみる。100シリーズを使うイヤホンは、Etimotic research ER-4, Shureの多くの機種, Klipsch Xシリーズ、Westone Wシリーズ,などである。これらは確かに高遮音性で知られたイヤホンであり、イヤホンの外径が小さいと高遮音性になるというのは間違いない。

200シリーズを使用するのはFinal heavenシリーズ, SONY MDR-EX1000、RHA 750, T20i, Bose SoundTrue,となる。100シリーズのイヤホンの遮音性には一歩譲る評価になっていることが多いが、200シリーズ機種も100シリーズ機種と同様耳の奥に入るのでかなり高い遮音性を示す。

400シリーズになるともう耳の浅いところまでしか入らなくなる。イヤホンを耳奥に差し込むのでなく、イヤーピースで耳とイヤホンの間の隙間をなくして、うまく蓋をすることで高遮音性を実現する設計になる。実際、例えば、コンプライのイヤーピースは体温で耳の形に合わせて固まり密閉度を上げるのがその目的である。400シリーズにはaudio-technica ATHシリーズ、elecom CH1000,2000, JVC FX750, Sennheiser IE60,などがリストされる。

耳近くにドライバを配置するタイプはもっとイヤピース内径が大きくなるものが多い。その場合でも、コンプライを使ったり、フランジ数を増やしてなるべく密閉した蓋にして遮音性を高める工夫をするイヤホンはあるが、もともと100シリーズイヤーピースを用いる設計のイヤホンの遮音性には及ばない。(100シリーズでコンプライを使ったり、フランジが増えたイヤピースを使えば更に遮音性が増す。)また、400、500シリーズを使う機種や耳に蓋をする設計の機種ではカナル型イヤホンとは言っても、カナル型の特徴である大きな遮音性をはじめから諦めているものすらある。

100、200シリーズイヤーピースを使う機種でなく、耳奥に入らない場合でも、電車移動時程度なら実用上は十分な高遮音性が得られることが多いが、一般には遮音性は100シリーズ>=200シリーズ>>400,500シリーズ利用のイヤホンとなる。図書館など特に静かな場所で使用を想定していて、カナル型イヤホンの中でも特に高遮音性、高音漏れ耐性イヤホンが欲しい場合、コンプライデータシートで100シリーズ,200シリーズを利用する機種を選べば間違いは無い。

今まで遮音性=イヤホン外径という客観的な見方を記した記事を見たことがないのでここに書いておく。